旅館のSNS集客がうまくいかない理由|9割が陥る運用の罠

宿の達人 編集部

「集客にはSNSがいいと聞くけれど、正直よく分からない」
「アカウントは作ったけれど、全然投稿していない」
「投稿はしているけれど、成果につながっている気がしない」

宿泊施設の経営者・女将から、このお悩みは本当によく届きます。

これまで多くの宿泊施設のデジタル集客をお手伝いしてきて分かったのは、
SNSで成果が出る宿と出ない宿の違いは、たった1つしかないということです。

この記事では、その1つのポイントと、明日から使える決め方の手順をお話しします。

SNSで最も重要なのは「目的の明確化」

多くの宿がSNSを始めるとき、その理由は
「みんなやっているから」「なんとなく必要そうだから」です。

これでは成果を出すのは難しい。理由は単純で、やることが決まらないからです。

投稿するのは料理の写真か、客室か、スタッフか。
どのプラットフォームを使うのか。誰に見せたいのか。
目的がないと、この全部が決まりません。だから続かないし、続いても効きません。

英語の勉強にたとえると分かりやすい

外国のお客様のために英語を勉強しようと思ったことはありませんか。

そのとき、中学英語の文法から始めましたか。
おそらく違って、「お部屋はこちらです」「お食事は6時からです」といった、
実際の接客で使うフレーズから覚えたはずです。

1から文法をやっていたら時間がいくらあっても足りません。
「外国人のお客様をおもてなしする」という明確な目的があるから、最短距離で身につけられるのです。

もし目的がなかったら、あれこれ単語を覚えたり、長文を読んでみたりして迷走していたはずです。

SNSもまったく同じです。
目的がないまま「とりあえず投稿する」から、何を出せばいいか分からなくなり、手が止まります。

実例|目的を「集客」から「採用」に変えた旅館

ある旅館の事例です。

この旅館は元々InstagramとFacebookを運用していましたが、
半年経ってもフォロワー数は100人程度でした。

ご相談内容は「SNSで集客を伸ばしたい」というものでした。
ですが詳しくお話を伺うと、状況が見えてきます。

  • 女将さんが予約から経理まで1人で担当していて、仕事量が限界に近い
  • スタッフの高齢化が進んでいて、デジタルに詳しい若手がいない

ここから、「SNSも担当してくれる若手がいるといいですね」という会話になり、
結論として、SNSの目的を「若手の採用」に絞ることにしました。

やったこと

目的が変わると、打ち手が全部変わります。

  • メインで運用するSNSをTikTokに変更(若い層の利用が多いため)
  • 投稿内容を、料理の写真からスタッフの日常を見せる短い動画に変更

具体的には、こういう投稿です。

  • 新人の板前さんが、先輩から技術を学ぶ姿
  • 女将さんが地元の学校で講演する様子
  • スタッフ全員で季節のイベントを楽しむ様子
  • 「この旅館で働く理由」のインタビュー

やったのは、「人と、働く魅力を見せる投稿」に切り替えただけです。

結果

  • 3ヶ月でTikTokのフォロワーが5,000人に急増
  • SNS経由の採用応募が毎月来るように
  • 半年で3名の若手採用に成功

そして思わぬ副産物として、
「TikTokを見てきました」という宿泊予約が月に数件届くようになりました。

採用を目的にしたのに、集客にもつながった。
ここが重要なところで、目的を絞ったほうが、結果として届く範囲は広がるのです。

なお、私たちがお手伝いしている施設の中には、
SNS運用に注力した結果自社サイトからの予約比率が20%から40%に増えたところや、
年間10名の採用につながったところもあります。
共通しているのは、いずれも目的が1つに定まっていたことです。

目的の決め方|まず3つのどれかに絞る

宿がSNSに求めるものは、だいたい次の3つに分かれます。
同時に3つ追わない、が最大のコツです。

  • 予約(集客):まだ知らない人に、泊まりたいと思ってもらう
  • リピート・ファン化:一度来た人と関係を続け、次の予約につなげる
  • 採用:働き手に、ここで働きたいと思ってもらう

決めるときの判断材料は、施設の外ではなく中にあります。

  • いま一番困っているのは、空室か、人手か
  • 来月それが解決したら、いちばん経営が楽になるのはどちらか
  • 投稿を続けられる人は誰か。その人が撮れるものは何か

3つ目は軽視されがちですが決定的です。
続けられない人に向いた目的を立てても、投稿は止まります。

目的が決まると、ここまで自動的に決まる

決めた目的主な媒体の候補出すべき中身見る数字
予約Instagram など客室・料理・体験・周辺の見どころ保存数、プロフィールからのサイト遷移、指名検索
リピートInstagram、LINE季節の便り、限定の案内、館内の変化再訪率、直販予約の比率
採用TikTok など若年層の多い媒体人、仕事の様子、働く理由応募数、採用数

媒体を先に決めないでください。目的を決めれば、媒体は後からついてきます。
「Instagramをやるべきですか」という問いは、順番が逆です。

目的が「採用」でも、集客につながる理由

事例で意外に思われるのが、
採用を目的にしたのに宿泊予約も入るようになったという部分です。

これは偶然ではありません。理由は2つあります。

1. 人が映っている投稿は、そもそも見られる
料理や客室の写真は美しくても、他館との差が出にくい。
一方、板前さんが技術を学ぶ姿や女将さんの講演は、その宿にしか存在しない映像です。
差があるから止まって見られ、結果として広く届きます。

2. 働く人が見えると、泊まる側も安心する
どんな人が迎えてくれるのかが分かる宿は、選ばれやすくなります。
採用向けに撮った映像が、そのまま「この宿の雰囲気」の説明になっているのです。

だから、目的を絞ることは「他を捨てること」ではありません。
一点に絞るからこそ投稿の質が上がり、結果として届く範囲が広がります。

続けるための現実的な設計

目的が決まっても、投稿が止まれば成果は出ません。
止まる原因はやる気ではなく、設計です。次の4つを先に決めてください。

1. 担当を1人決める

「みんなで」は誰の仕事でもなくなります。
兼務で構いませんが、名前を1人に決めることが必須です。

2. 撮影を「業務のついで」に組み込む

新しく撮影時間を作ろうとすると続きません。
仕入れ、仕込み、朝礼、季節の飾りつけなど、
もともと発生している場面をそのまま撮るのが現実的です。

3. 頻度は「守れる下限」に置く

週1回で十分です。
毎日投稿を目標にして止まるより、週1回を1年続けたほうが積み上がります。

4. ネタを枯らさない仕組みを作る

投稿が止まる最大の原因は「何を出せばいいか分からない」です。
先に10本分のテーマを書き出して貼っておくだけで、かなり延命します。

3ヶ月ごとに確認すること

SNSは短期で判断すると必ず「効果がない」という結論になります。
3ヶ月単位で、次の3点だけ見てください。

  • 目的に対応する数字は動いたか(採用なら応募数、予約なら「見て来た」件数)
  • 投稿が止まらずに続いているか(続いていないなら、原因は中身ではなく設計)
  • 反応が良かった投稿は、どの種類だったか

3つ目が次の3ヶ月の方針になります。
反応の良かった種類を増やし、悪かった種類を減らす。 これを繰り返すだけです。

なお、目的を変えること自体は問題ありません。
ただし変えるのは3ヶ月単位にしてください。毎月変えると、何も積み上がりません。

よくある間違い

  • とりあえず全部の媒体でアカウントを作る。 更新が止まった空アカウントは、むしろ印象を下げます
  • フォロワー数だけを見る。 目的が採用なら見るのは応募数、予約なら予約数です
  • 毎日投稿しようとする。 続かない頻度で始めると必ず止まります。週1回でも構いません
  • 担当者を決めずに「みんなで」やる。 誰の仕事でもなくなり、自然に消えます
  • 成果が出ないから媒体を変える。 変えるべきは媒体ではなく、多くの場合は目的と中身です

まとめ

  • SNSで成果が出るかどうかは、目的が決まっているかどうかだけで分かれる
  • 目的は予約・リピート・採用の3つから1つに絞る。同時に追わない
  • 実例では、目的を採用に絞ってTikTokに切り替えた結果、

3ヶ月でフォロワー5,000人、半年で3名の採用、加えて予約も入るようになった

  • 媒体・投稿内容・見る数字は、目的が決まれば自動的に決まる