レベニューマネジメントとは|宿の価格と在庫の決め方

宿の達人 編集部

レベニューマネジメントは、難しい理論ではなく、決め方のルールを作る作業です。

やっていることを一言にすると、
「いつ・いくらで・何室を、どの入口に出すか」を、勘ではなく事前のルールで決めること。
これだけです。

この記事では、言葉の意味から、実際の手順、
そしてシステムを入れずに小規模施設が今日から始める方法までを整理します。

レベニューマネジメントとは

レベニューマネジメントとは、
限られた客室を、需要に応じた価格と条件で売り分けることで、期間全体の売上を最大化する管理手法です。

宿泊業に向いているのは、次の3つの条件が揃っているからです。

  • 在庫が翌日に持ち越せない。 今夜売れなかった部屋は、明日には二度と売れません
  • 部屋数が固定されている。 需要が増えても、当日に部屋を増やすことはできません
  • 同じ部屋を、異なる価格で売れる。 予約の時期・条件・入口によって価格を変えられます

重要なのは、目的が「高く売ること」でも「埋めること」でもない点です。
目的は期間全体の売上(さらに言えば利益)であり、
そのために「安く売ってでも埋める日」と「空室のまま単価を守る日」を、意図的に作り分けます。

つまりレベニューマネジメントの本体は、値付けそのものではなく、
「この日はどちらの日か」を先に決めておくことです。

見るのは稼働率ではなく RevPAR です

見るのは稼働率ではなく RevPAR です

ダイナミックプライシングとの違い

この2つは、しばしば同じ意味で使われますが、上下関係にあります。

レベニューマネジメントダイナミックプライシング
対象価格+在庫+販売条件+販売チャネル主に価格
目的期間全体の売上・利益の最大化需要に応じた価格の最適化
打ち手の例売止め、最低宿泊日数、プランの出し分け、媒体ごとの出し方価格の引き上げ・引き下げ
関係上位の考え方その中の手段のひとつ

「価格を動かす」だけではレベニューマネジメントになりません。
たとえば、満室に近い週末の価格を上げるのはダイナミックプライシングですが、
同じ日に1泊のみの予約を止めて2泊以上に限定する、
手数料の高い媒体への在庫の出し方を変えるといった判断まで含めると、
レベニューマネジメントの領域に入ります。

小さな宿ほど、価格より先に在庫と条件のほうが効きます。
価格は競合と比較されますが、在庫と条件は自分だけで決められるからです。

押さえるのは3つの指標だけ(ADR・OCC・RevPAR)

指標は無数にありますが、最初に見るのはこの3つで十分です。

指標読み方意味計算式
ADR平均客室単価売れた1室あたりの平均単価宿泊売上 ÷ 販売した客室数
OCC客室稼働率部屋がどれだけ埋まったか販売した客室数 ÷ 販売可能な客室数
RevPAR販売可能客室あたり売上空室も含めた1室あたりの売上宿泊売上 ÷ 販売可能な客室数(=ADR × OCC)

計算例(前提を置いた仮の数字です)

前提: 客室10室、30日間、その月の宿泊売上が450万円、販売した客室数が延べ200室。

販売可能客室数 = 10室 × 30日 = 300室泊
ADR    = 4,500,000 ÷ 200 = 22,500円
OCC    = 200 ÷ 300 = 66.7%
RevPAR = 4,500,000 ÷ 300 = 15,000円
        (= 22,500円 × 66.7%)

なぜRevPARを見るのかというと、ADRとOCCは片方だけなら簡単に動かせるからです。
値下げすればOCCは上がり、値上げすればADRは上がります。
掛け算であるRevPARだけが、その両方を同時に評価します。

上の例で、値下げによってADRが20,000円に下がり、OCCが75%まで上がったとします。

RevPAR = 20,000円 × 75% = 15,000円

売上は同じです。 客数だけが増えています。
リネン・食材・清掃・人件費が増える分、利益はむしろ減っている可能性が高いことになります。

RevPARで終わらせず、利益まで見る

ここが宿泊業、とくに食事を提供する旅館で決定的に重要な点です。

RevPARは売上の指標であって、利益の指標ではありません。
客数が増えれば、変動費(食材・アメニティ・清掃)と人件費が増えます。
稼働率を上げた結果、忙しくなっただけで利益が減るという事態は実際に起こります。

この構造は別記事で詳しく扱っています。
目標を「稼働率」ではなく「必要な利益」から逆算する考え方は、
記事B17(客室稼働率を上げると利益が減ることがあります)を先に読んでください。

レベニューマネジメントの目標値は、
「達成したいRevPAR」ではなく「達成したい利益から逆算したRevPAR」に置きます。

ホテル・旅館での実務は、何をしているのか

実務は次の5つの繰り返しです。難しい計算はありません。

1. 日ごとの需要を、事前に3段階に分ける
「強い日/普通の日/弱い日」の3つで十分です。
判断材料は、曜日・連休・地域の行事や大型イベント・学校の休み・気候・自館の予約の入り方です。
最低3ヶ月先まで、カレンダーに色を塗ります。

2. 段階ごとに価格を決めておく
強い日は上げ、弱い日は下げる。ここまでは誰でもやっています。
差がつくのは、それを事前に決めているか、直前に慌てて決めているかです。

3. 予約の入り方(ペース)を定期的に見る
今日時点で、来月・再来月の予約が何室入っているか。
これを去年の同じ時点の数字と比べます。
比べる相手は「去年の最終結果」ではなく、「去年の同じ日時点の予約数」です。ここを間違えると判断を誤ります。

4. ペースが遅い日/速い日にだけ手を打つ

  • 遅い日: 価格を下げる前に、まず売れる状態かを確認します。売止め・在庫0・プランの掲載漏れがよくあります
  • 速い日: 価格を上げる、下位プランを止める、最低宿泊日数をかける

5. 打った手の結果を、翌月に必ず見る
何をしたか記録していないと、翌年に再現できません。記録がないレベニューマネジメントは、ただの値動きです。

「価格を下げる」より先に確認すること

予約が入らないとき、最初にすべきなのは値下げではありません。
下げても入らない原因のほうが、実際には多いからです。次の順で確認します。

  1. その日は、そもそも売れる状態か。 売止めが残っていないか、在庫が0になっていないか\
  2. すべての媒体に出ているか。 販売期間が切れているプランがないか\
  3. 部屋タイプごとに、価格の順序が逆転していないか。 下位グレードのほうが高く見えていないか\
  4. 人数条件は合っているか。 2名で検索したときに出るか、3名以上が弾かれていないか\
  5. プランの内容が伝わっているか。 写真・説明文・食事内容が薄いまま価格だけ並んでいないか

この5つを潰してから、初めて価格の話に入ります。
順番を逆にすると、売れる状態になっていない日の価格だけを下げることになり、
単価だけが落ちます。

RMS(レベニューマネジメントシステム)は必要か

RMSは、需要予測と価格の推奨を自動で行うシステムです。
市場価格や自館の予約状況を取り込み、日ごとの推奨価格を出してくれます。

判断の目安は「客室数」と「価格を動かす頻度」です。

こういう施設判断
客室数が多く、日々価格を動かしているシステムの効果が出やすい
客室数が限られ、価格の型が季節で数パターンまず表計算ソフトで十分なことが多い
料金の入力自体が月1回で止まっているシステム以前に、運用の頻度が課題

小規模施設で先に効くのは、システムではなく次の2つです。

  • サイトコントローラで、全媒体に一度に反映できる状態を作る。 媒体ごとに手入力している限り、価格を動かす回数は増やせません
  • 料金表の型を決める。 日ごとに考えるのをやめ、「この日はこの型」で決まるようにします

なお、各RMSの価格・機能・連携可否は変更されます。
導入を検討する際は、必ず各社の公式の最新情報をご確認ください。

システムなしで始める手順

表計算ソフト1枚で始められます。順番はこの通りに進めてください。

手順1: 料金の「型」を3〜5段階つくる

日ごとに価格を考えるのをやめ、段階に番号を振ります。

段階該当する日価格の考え方
1(最安)平日で、需要の弱い時期基準
2通常の平日基準+
3金曜・日曜、行楽期の平日中位
4土曜、連休中高位
5(最高)年末年始・大型連休のピーク、地域の大型行事最高位

段階の数を増やしすぎないこと。 5段階を超えると、人が管理しきれなくなります。

手順2: 3ヶ月先までのカレンダーに、段階の番号を振る

日付ごとに1〜5を振るだけです。この作業が本体です。
迷う日は、去年の同じ曜日・同じ時期の埋まり方を見て決めます。

手順3: リードタイム(予約の入る時期)でルールを足す

宿によって、予約が入る時期は大きく違います。
まず自館の予約データで、宿泊日の何日前に予約が入っているかを見てください。

その上で、次のようなルールを決めます。

  • 早い時期に埋まりやすい日(連休・行事の日)は、早めに上位の価格で出し、直前に下げない
  • 直前に決まりやすい日(通常の平日)は、直前の残室に応じて動かす余地を残す
  • どの日も、宿泊◯日前を過ぎたら価格は動かさないという締めの日を決めておく

「直前になったら下げる」を無条件のルールにしないでください。
早期に予約したお客様が、直前の値下げを見ることになります。
下げるなら、プランを分ける・条件を付けるなど、区別できる形にします。

手順4: 売止めと在庫の使い方を決める

価格と同じくらい重要なのに、放置されがちな領域です。

  • 在庫数は、実際の客室数を超えて登録しない。 超えているとダブルブッキングが起きます
  • 逆に、実室数より少なく出していないか。 これは静かな売り逃しで、気づかれません
  • 売止めは「解除する条件」とセットで記録する。 解除忘れは、最も多い機会損失のひとつです
  • 満室に近い日は、下位プランだけを止める。 全体を止めるのではなく、安い入口から閉じます

「在庫が0なのに予約が入らない」「予約が実室数を超えた」は、どちらもOTAではなく在庫設定側の問題であることがほとんどです。

手順5: 毎月、同じ形で振り返る

月に一度、次の5行を記録します。表計算ソフトに追記していくだけです。

・当月の ADR / OCC / RevPAR
・前年同月の ADR / OCC / RevPAR
・今月、価格や在庫について打った手(日付と内容)
・その手を打った日が、結果としてどうなったか
・来月やること(1つだけ)

「来月やること」を1つに絞るのが要点です。
複数を同時に変えると、何が効いたのか分からなくなります。

よくある3つの誤解

「レベニューマネジメント=値上げのことだ」
違います。下げる判断も、下げない判断も含みます。
むしろ実務で効くのは「埋まる日を安く売ってしまわない」ほうです。
放っておくと埋まる日に割引プランを出し続けているケースは、非常によくあります。

「稼働率が上がれば売上も利益も増える」
売上は増えますが、利益は増えるとは限りません。
客数に比例して増える費用があるためです。詳しくは記事B17を参照してください。
目標にすべきは稼働率ではなく、必要な利益から逆算したRevPARです。

「プランをたくさん作れば、機会が増える」
プランを増やすほど管理が増え、価格の整合が崩れます。
同じ部屋に価格の近いプランが並ぶと、安いほうだけが売れます。
増やすべきは数ではなく、強い日と弱い日で出し分けられる構造です。

まとめ

  • レベニューマネジメントとは、価格・在庫・条件・チャネルをルールで決めて、期間全体の売上を最大化する手法
  • ダイナミックプライシングは、その中の価格という手段のひとつ
  • 見る指標は ADR・OCC・RevPAR の3つ。判断は掛け算のRevPARで行う
  • ただしRevPARは売上の指標。目標は必要な利益から逆算する(記事B17)
  • 予約が入らないとき、値下げより先に「売れる状態か」を5点確認する
  • 小規模施設は、システムより先に料金の型(3〜5段階)と3ヶ月先のカレンダーを作る
  • 毎月、同じ5行で振り返り、来月やることは1つに絞る