楽天トラベルの手数料が値上げされたときの対応|宿がとれる4つの選択肢

宿の達人 編集部

予約サイトから料率の改定や新しい施策への参加要請が届くと、
現場では「また上がるのか」という空気になります。

ただ、その場の感情で「もうやめる」と決めるのが、いちばん損をします。
判断は数字でしかできません。この記事では、その手順を書きます。

なお、料率の改定は特定の媒体だけの話ではありません。
国内・海外を問わず、条件の見直しは定期的に届きます。
ここで書く4ステップは、どの媒体から通知が来ても同じように使えます。

まず、通知そのものを正確に読む

数字を出す前に、通知の中身を確認してください。見るのは3点です。

  • いつから適用されるのか(既存の予約に遡って効くのか、新規分からか)
  • 何に対してかかるのか(宿泊料金のみか、ポイント原資やセール分も含むのか)
  • 参加が必須なのか、任意なのか

「値上げ」と受け取ったものが、実際には任意参加の施策の案内だったというのは珍しくありません。
必須の改定なのか、断れる提案なのか。ここを取り違えると、この後の判断が全部ずれます。

STEP 1|今、その媒体がいくら稼いでいるかを出す

まず、その媒体の直近12ヶ月の売上と件数を出します。見るのは3つです。

  • 年間の売上(宿泊料金ベース)
  • 年間の予約件数と、平均単価
  • 全体に占める比率

比率が5%の媒体と、40%の媒体では、同じ料率の引き上げでも意味がまったく違います。
まずここを確定させてください。

サイトコントローラを入れている場合は、媒体別の売上レポートから一括で取れます。
月ごとに並べておくと、次のステップの計算がそのままできます。

STEP 2|引き上げ分が、年間いくらになるかを出す

年間の追加負担 = その媒体の年間売上 × 引き上げ幅

計算すると、思ったより小さいことも、思ったより大きいこともあります。
「率が上がった」という事実ではなく、年額いくらかで捉え直すのが重要です。

このとき、ポイント負担やセール参加分の上乗せも合算してください。
料率だけを見ていると、実際の負担を見誤ります。

年額が出たら、その金額が何に相当するかまで翻訳しておくと判断が楽になります。
「年間の追加負担は、平均単価の何泊分か」に直すと、
次のステップで「他で何泊拾えば埋まるのか」がそのまま見えます。

STEP 3|取れる選択肢は4つしかない

選択肢向いている状況主なリスク
値上げして吸収する埋まるのが早い日が多い一律に上げると予約が落ちる
他の媒体に振る客層が他媒体と重なっているその媒体固有の客層を失う
手数料のかからない経路を増やす中長期で取り組めるすぐには効かない
受け入れるその媒体の比率が小さい何もしないまま忘れる

選択肢1|値上げして吸収する

いちばん素直な対応ですが、一律の値上げは危険です。
単価を上げれば予約は落ちます。実際に、ある旅館では
単価を2割上げた翌年に室泊数が4割落ちました。

やるなら、上げてよい日だけ上げます。

  • 3ヶ月前に埋まってしまう日 … 安すぎるサイン。ここは上げられます
  • 直前まで空いている日 … 上げてはいけません。売り方を変える対象です

日付を分けずに一律で上げると、埋まらない日がさらに埋まらなくなります。
判断材料は、日別の残室数と、その日が何日前に埋まったかの2つで足ります。

選択肢2|他の媒体に振る

その媒体を減らし、他の媒体の在庫配分を増やす対応です。
ただし、媒体ごとに客層が違います。 同じお客様が別の媒体に移ってくれるとは限りません。

判断のポイントは、その媒体の客層が他と重なっているかです。
重なっているなら振り替えは効きます。その媒体でしか取れない客層なら、切ると丸ごと消えます。

振るときは、いきなり販売を止めずに在庫の配分を下げるところから始めてください。
止めると掲載順位が下がり、戻すのに時間がかかります。

選択肢3|手数料のかからない経路を増やす

これが本命です。

送客手数料は、その媒体経由の予約にしかかかりません。
公式サイト、Googleマップ、LINE、電話から入った予約には発生しません。

料率の引き上げは、こちらでは止められません。
止められないものに時間を使うより、止められる側(直接予約の比率)を動かすほうが確実です。

ただし、これはすぐには効きません。 半年から1年かけて育てるものです。
だからこそ、改定の通知が来た時が、着手を決める合図になります。

選択肢4|受け入れる

比率が小さい媒体であれば、これも正しい判断です。
年額での追加負担が小さいなら、対応にかける手間のほうが高くつきます。

すべての媒体に同じ熱量で対応する必要はありません。
ただし「受け入れる」と決めたことは記録に残してください。
決めずに流したのか、決めて受け入れたのかで、次の改定のときの動き方が変わります。

STEP 4|決めたら、期限を切って見直す

対応を決めたら、3ヶ月後に同じ数字を出し直してください。

  • その媒体の件数は落ちたか
  • 落ちた分を、他の媒体が拾ったか
  • 全体の売上と、手元に残った額はどうなったか

「上がったから減らした」で終わらせず、減らした結果どうなったかまで見る。
ここまでやって初めて、次の改定のときに迷わなくなります。

最初の1週間でやること

改定の通知が届いてから、実際に手を動かす順番を決めておくと迷いません。

  • 1〜2日目:通知を読み直し、適用開始日・対象・必須か任意かを1枚にまとめる
  • 3〜4日目:媒体別の直近12ヶ月の売上・件数・平均単価を出す(STEP 1)
  • 5日目:年間の追加負担を計算し、平均単価の何泊分かに直す(STEP 2)
  • 6〜7日目:4つの選択肢から1つ、または組み合わせを決め、見直す日をカレンダーに入れる

最後の「見直す日を先に入れる」が抜けると、そのまま1年が過ぎます。
改定の通知は毎年のように届きます。1回ごとに考え直すのではなく、
同じ手順で処理できる形にしておく
のが、いちばん時間を節約できるやり方です。

やってはいけない対応

  • 通知を見た当日に、販売を止める。 掲載順位が落ち、戻すのに数ヶ月かかります
  • 全日を一律で値上げする。 埋まらない日がさらに埋まらなくなります
  • 年額に直さずに議論する。 「率が上がった」だけでは、対応すべき規模が判断できません
  • 決めたまま検証しない。 3ヶ月後の数字を見ないと、判断が正しかったのか分かりません

まとめ

  • 通知はまず、適用範囲と、必須か任意かを確認する
  • 率ではなく、年額いくらの負担増かに直して捉える
  • 値上げで吸収するなら、上げてよい日だけ上げる
  • 媒体を減らす判断は、その客層が他で拾えるかで決める
  • 本命は手数料のかからない経路を増やすこと。改定の通知は、その着手の合図