客単価を上げるプランの作り方|追加コスト0で単価を上げる
「客単価を上げたい。でも、新しいサービスを始めるリスクは取れない」。
「現状を大きく変えたいわけではないが、できることなら単価は上げたい」。
旅館のご相談で、いちばん多いのがこの形です。
広告や本格的な集客施策となると専門の人材が要り、業者にも頼まなければならない。
だから足を踏み出せない。よく分かります。
この記事は、追加の手出しをせず、今ある設備とサービスのままで客単価を上げる話です。
上げ幅が数万円になることはありません。ですが、1人あたり数千円なら十分に狙えます。
打ち手はひとつ|「人気の要望」をプラン化する
追加コストをかけずに客単価を上げる方法は、ひとつです。
お客様からの人気の要望を、有料のプランに変えること。
少しいいレストランを想像してください。
夜景の見える窓際席と、通常のテーブル席があります。
大切な記念日のデートで使うとしたら、
「当日空いていれば窓際にご案内できます」で満足するでしょうか。
多くの人は、せっかくの特別な日だからと、追加料金を払ってでも窓際を確約したいと考えます。
私たちがお金を払っているのは、席そのものではありません。
「確約されている」という安心感と特別感です。
むしろ「お金で解決できるなら助かる」と考えるお客様も多くいます。
旅館でも、まったく同じことが起きます。
部屋の設備も基本のサービスもそのままで、
- チェックイン時間を早める
- チェックアウト時間を遅くする
- 眺めのいい部屋を確約する
これだけで、お客様は喜んで追加料金を払ってくださいます。
そして重要なのは、これらが宿側にとってほとんど追加コストにならないことです。
お客様も満足し、宿の利益も増える。数少ない、両方が成立する仕組みです。
実例|ある旅館で導入した4つのプラン
ある旅館の事例です。
ご支援を始めた当初は、予約の約90%がOTA経由という状態でした。
まずは「OTA依存から抜け出したい」というご要望に応えて、
自社サイトの改善と直接予約特典の設定を進め、自社サイトからの予約比率が徐々に増えてきた。
その次の段階として、利益率を上げるために客単価を上げる必要が出てきた、というタイミングです。
そこで設定したのが、次のプランです。
1. アーリーチェックインプラン
通常15時のチェックインを、追加料金3,000円で13時から利用可能に。
2. レイトチェックアウトプラン
通常10時のチェックアウトを、追加料金3,000円で12時まで滞在可能に。
3. 絶景確約プラン
眺めのいい部屋を、追加料金で確約できるように。
導入にあたって特に重視したのは、追加コストをほとんどかけないという一点です。
アーリーチェックインとレイトチェックアウトは、清掃スケジュールを少し工夫するだけ。
絶景確約プランは、もともとある部屋を、そう予約できるようにしただけです。
4つ目は、予約時の備考欄から見つかった
もうひとつ、予約時の備考欄を集計したことで見つかったプランがあります。
「誕生日なのですが、何かやっていますか」という問い合わせが、複数件ありました。
そこで打ち出したのが、アニバーサリープランです。
- 眺めのいい部屋の確約
- 記念日のケーキ
- 記念写真
これらをセットにして、追加料金をいただく形にしました。
要望は、すでに宿の中に書かれています。
新しく思いつく必要はなく、備考欄・アンケート・電話の問い合わせメモを集計するだけで、
「お金を払ってでも欲しい人がいるもの」が見つかります。
導入した4プランを、宿側の追加コストと並べるとこうなります。
| プラン | 内容 | 宿側の追加コスト |
|---|---|---|
| アーリーチェックイン | 15時→13時、追加3,000円 | 清掃スケジュールの工夫だけ |
| レイトチェックアウト | 10時→12時、追加3,000円 | 清掃スケジュールの工夫だけ |
| 絶景確約 | 眺めのいい部屋を追加料金で確約 | もともとある部屋を確約に変えただけ |
| アニバーサリー | 眺望確約+記念日のケーキ+記念写真 | ケーキ・記念写真の原価が乗る |
結果
これらのプランを導入して、3ヶ月で客単価が平均500円ほど上昇しました。
新しい設備も、新しいサービスも足していません。
すでにあるものを、確約できる形に組み直しただけでこの変化です。
「客単価+500円」が、年間でいくらになるかは自分で出せる
ここで大事なのは、上げ幅そのものより、それが年間でいくらになるかを自分の数字で出すことです。
計算はかんたんで、次の式だけです。
年間の増加額 = 客単価の上げ幅 × 1泊あたりの平均宿泊人数 × 客室数 × 稼働率 × 365日
たとえば、客室数20室・平均稼働率60%・1室あたり平均2名の宿で、
客単価が1人あたり500円上がった場合はこうなります。
- 年間の延べ宿泊人数 = 20室 × 60% × 365日 × 2名 = 約8,760人泊
- 増加額 = 8,760人泊 × 500円 = 年間およそ438万円
同じ500円でも、規模と稼働率が違えば結果はまったく変わります。
前提を 客室数20室・1室あたり平均2名・365日 に固定し、上げ幅と稼働率だけを振るとこうなります
(上の式で計算した売上の増加額です)。
| 客単価の上げ幅 | 稼働率50% | 稼働率60% | 稼働率70% |
|---|---|---|---|
| 300円 | 約219万円 | 約263万円 | 約307万円 |
| 500円 | 約365万円 | 約438万円 | 約511万円 |
| 1,000円 | 約730万円 | 約876万円 | 約1,022万円 |
だからこそ、他所の金額をそのまま持ってくるのではなく、
御施設の客室数・稼働率・平均宿泊人数を入れて計算してください。
なお、この式で出るのは売上の増加額です。
利益で見るときは、ここからOTA手数料と、そのプランにかかる原価を引きます。
アーリーチェックインや眺望確約のように原価がほぼゼロのものは、
引くのが手数料だけなので、売上の増加がほぼそのまま利益として残ります。
逆に、記念日プランのようにケーキや装花の原価が乗るものは、
原価と手間を引いたあとで、いくら残るかまで出しておくと判断を誤りません。
ただし、増やせばいいわけではない
ここに、必ずセットで押さえておくべき注意点があります。
OTAを利用している場合、プランに応じて手数料の条件が変わることがあります。
OTA運用を業者に委託している場合も同様です。
そのため、じゃらん・楽天トラベルといったOTA側の言うことや、
OTA運用の代行業者の言うことを鵜呑みにせず、見込みの収益額を含めて慎重に計算することが大事です。
過剰にプランを細分化して手数料の負担が増えれば、せっかくの利益が相殺されます。
たまに、近隣施設のチケット付きプランなど、謎にプラン数の多い旅館をお見かけします。
そういう施設ほど、一度確認してみることをおすすめします。
- そのプランで、本当に利益が出ているのか
- そのプランの維持にいくらかかっているのか(料金の入力・在庫の管理・問い合わせ対応の手間を含む)
ただ増やすのではなく、最も需要の高い要望に絞ってプラン化する。 ここが要点です。
応用|「時間」「場所」「記念日」の3方向で棚卸しする
この考え方は、上の4プランで終わりではありません。
宿がすでに持っているものを、確約できる形に変えるという発想で棚卸しすると、候補はまだ出てきます。
3つの方向と、それぞれで売れるものを整理します。
| 方向 | 売るもの | 押さえどころ |
|---|---|---|
| 時間を売る | チェックイン前・チェックアウト後の空き時間 | 原価はほぼゼロ。清掃に余裕のある日だけ販売 |
| 場所を売る | 眺望のいい部屋・角部屋・静かな棟・露天風呂付き | 「空いていればご案内」の部屋が最有力候補 |
| 記念日を売る | ケーキ・花・記念写真・部屋の飾りつけ | 外注しても原価が読める。口コミやSNSに出やすい |
時間を売る
チェックイン・チェックアウトの前後は、宿にとって「空いている時間」です。
早く入りたい人・遅く出たい人は必ずいますし、原価はほぼ発生しません。
繁忙日は出さず、清掃に余裕のある日だけ販売するという出し方もできます。
場所を売る
眺望のいい部屋、角部屋、静かな棟、露天風呂付き。
同じ料金で売っているなら、確約に値段をつけられないかを見直します。
「空いていればご案内」で無料提供している部屋こそ、いちばんの候補です。
記念日を売る
誕生日・結婚記念日・還暦・退職祝い。
ケーキ・花・記念写真・部屋の飾りつけは、外注しても原価が読めるうえに、
写真がSNSや口コミに出やすく、集客側にも効きます。
出し分けの目安としては、自社サイトから先に試すのが安全です。
手数料がかからないぶん利益率が高く、反応を見てから他媒体に広げれば、
「作ったけれど売れず、管理の手間だけが残った」という結果を避けられます。
作る前に確認する4項目
新しくプランを立てる前に、次の4つを潰しておくと失敗しにくくなります。
| 確認項目 | 見るところ | 潰し方 |
|---|---|---|
| 原価はいくらか | 材料費+清掃・配膳・受付の手間 | 手間だけ増えて単価が上がらないなら作らない |
| オペレーションが回るか | 清掃が間に合うか、翌日の開始を遅らせないか | 1日あたりの上限室数を決めておく |
| 在庫は分けられるか | 確約できる部屋数 | 確約数を超えて売らない仕組みを入れる |
| どの媒体に出すか | 管理する対象が増えすぎないか | 自社サイトと主力1媒体で試してから広げる |
よくある間違い
- 「安くする」方向で考えてしまう。 単価を上げる話なのに、
結果として割引プランが増えて平均単価が下がる、というのはよくある事故です
- 要望の裏取りをせずに作る。 「あったらいいと思う」ではなく、
実際に聞かれた件数でプランを決めます(御施設の備考欄の実数を数えてください)
- 売れないプランを消さない。 増やすと同時に、
半年売れていないプランを落とすルールを決めておかないと、プラン一覧が読めなくなります
- 確約できないものを確約と書く。 眺望確約は、在庫の管理とセットでなければクレームの元になります
まとめ
- 追加コストをかけずに客単価を上げる方法は、人気の要望を有料プランに変えること
- 時間(アーリー・レイト)と部屋(眺望確約)と記念日は、宿側の追加コストがほとんどかからない代表格
- プランは増やすほど良いのではない。 手数料と管理の手間を含めて、需要の高いものに絞る