OTA手数料の勘定科目と消費税の扱い|宿泊施設の経理
予約サイトの手数料をどう処理するかは、宿泊施設の経理で迷いやすい箇所です。
検索されている割に、まとまった説明が少ないテーマでもあります。
なお、最終的な処理は顧問税理士の判断に従ってください。
この記事は「何を確認すべきか」を整理したものです。
勘定科目は「支払手数料」が一般的
OTAへの送客手数料は、支払手数料として処理するのが一般的です。
広告としての性格が強い費用(特集枠、バナー、有料の掲載枠)については、
広告宣伝費で分ける考え方もあります。
分けるかどうかは、分けた結果を経営判断に使うかで決めるとよいでしょう。
- 分けない → 手間は少ないが、「販促にいくら使ったか」が見えない
- 分ける → 販促費だけを取り出して費用対効果を検証できる
私たちは分けることをお勧めしています。
OTAから届く販促の案内に毎回いくら払っているかは、年額で見ないと判断できないためです。
分けるなら、この3つに分ける
科目を細かくしすぎると続きません。実務では次の3区分で十分です。
下の表は、分けるときの3区分と、それぞれが何に対して発生する費用かを並べたものです。
| 区分 | 何に対して発生するか | 売上との連動 |
|---|---|---|
| 送客手数料 | 予約が入ったことに対して発生 | 売れた分だけ出ていく |
| 販促費・広告費 | 特集枠・掲載枠・参加費など | 予約の有無と関係なく出ていく |
| ポイント原資の負担 | 宿側が負担するポイント分 | 企画への参加状況で変わる |
この3つを分けておくと、「売れた分に比例して出ていく費用」と
「売れなくても出ていく費用」が切り分けられます。
見直しの対象になるのは、たいてい後者です。
予約が入っていないのに毎月出ていく費用は、止めても売上が減らない可能性があるからです。
総額で計上するか、手取りで計上するか
ここがいちばん間違えやすい箇所です。
原則は総額です。 宿泊料金の全額を売上に立て、手数料は費用として別に計上します。
売上高 100,000
支払手数料 10,000 ← 費用として計上
現預金 90,000 ← 実際に入ってくる額
これを、入金額の90,000だけを売上に立ててしまうと(純額処理)、
売上高が実態より小さくなります。
同じ1予約を、総額で立てた場合と入金額だけで立てた場合で比べると次のようになります。
| 処理の仕方 | 売上高に立つ額 | 手数料の見え方 |
|---|---|---|
| 総額(原則) | 100,000 | 支払手数料10,000として別に計上 |
| 純額(入金額のみ) | 90,000 | 費用として表に出てこない |
売上高が小さくなると、金融機関に出す決算書の見え方が変わります。
規模が実態より小さく見えるため、融資の相談のときに不利に働くことがあります。
経理の都合だけの話ではない、というのがこの論点の重いところです。
海外OTAのように、媒体が客から先に受け取って手数料を引いて振り込む形の場合、
入金額だけを見て処理してしまいがちです。振込額と、実際の宿泊料金は違います。
精算書で内訳を確認してください。
消費税で見落としやすい点
国内の媒体への手数料は、通常、課税仕入として処理します。
問題は海外の媒体です。国外の事業者が提供するサービスに対する支払いは、
消費税の扱いが国内取引と異なる場合があります。
リバースチャージ方式という仕組みが関係することもあり、
自社が課税事業者か免税事業者か、簡易課税か本則課税かによっても結論が変わります。
ここは必ず税理士に確認してください。
海外OTAを使い始めた年に、処理が変わっていないかを一度見てもらうのが安全です。
入湯税は売上ではありません
宿泊料金と一緒に受け取っている入湯税は、預り金です。売上ではありません。
OTAの画面に「+税・サービス料」として別建てで表示されている金額の中身が
入湯税であることが多く、売上の突き合わせをするときにここがずれる原因になります。
月次でOTAの数字とサイトコントローラの数字が合わないとき、
まずこれを疑ってください。
キャンセル料をもらったときの扱い
キャンセル料は、受け取った理由によって性格が変わります。
- 部屋を確保していたことへの補償として受け取る分 → 逸失利益に対する補償の性格
- 実際にかかった費用(食材の仕入れなど)の実費として受け取る分 → 費用の補填の性格
さらに、OTA経由のキャンセルでは、キャンセル料の一部に手数料がかかる契約があります。
「売上ゼロだから何も処理しなくてよい」ではありません。
精算書にキャンセル分の行が立っているかを確認してください。
この区分と消費税の扱いは、契約と実態によって変わります。顧問税理士にご確認ください。
代行会社に払っている費用は、別の科目で持つ
OTAへの手数料と、運用を委託している代行会社への費用は、性格が違います。
同じ「支払手数料」にまとめてしまうと、どちらが増えているのかが分からなくなります。
- OTAへの送客手数料 … 予約が入った分だけ発生する。売上に連動する
- 代行会社への費用 … 契約に基づいて発生する。売上に連動しないことも多い
分けて持っておくと、「売上は伸びていないのに外注費だけ増えている」といった
状態がその月のうちに見えます。科目を分ける目的は、税務ではなく経営判断のためです。
月次で数字が合わないときに見る3点
宿泊施設の経理で「OTAの管理画面の数字と、こちらの帳簿が合わない」というのは頻繁に起きます。
原因はほぼ次の3つです。
下の表は、3つの原因と、差がどう見えたときにそれを疑うかの対応です。
| 原因 | 差の出かた | 疑うタイミング |
|---|---|---|
| 集計の基準日が違う | チェックアウト日と宿泊日のずれ | 月をまたぐ宿泊がある月 |
| 税抜きか税込みか | 比率が1.1前後で一定 | 海外の媒体が入っている |
| 割引前か割引後か | セール参加分だけ差が広がる | セールに出た月 |
1. 集計の基準日が違う
媒体によって、チェックアウト日で集計するものと宿泊日で集計するものがあります。
月をまたぐ宿泊があると、当然ずれます。
2. 税抜きか税込みか
海外の媒体は税抜きで計上されることが多く、約1割ずれます。
比率が1.1前後で一定なら、まずこれです。
3. 割引前か割引後か
サイトコントローラ側は割引前の金額で持っていることがあります。
セール参加分がある月に差が広がるなら、これを疑います。
完全に一致させることを目標にしないでください。
目標は「差額が説明できること」です。
毎月同じ3点を確認する形にしておけば、差が出た月にどこを見ればよいかがすぐ分かります。
月次で残しておくとよい資料
決算のときにまとめてやろうとすると、精算書を1年分さかのぼることになります。
月次で次の3つを残しておくと、その手間がなくなります。
下の表は、月次で残す資料と、その揃え方です。
| 残すもの | 揃え方 |
|---|---|
| 媒体別の売上・手数料・販促費の一覧 | 1行1媒体、12ヶ月分 |
| 各媒体の精算書のPDF | 日付と媒体名でファイル名を統一する |
| 差額が出た月の理由のメモ | 基準日か、税か、割引かを書く |
3つ目が特に効きます。翌年の同じ月に同じ差が出たとき、調べ直さずに済みます。
まとめ
- 勘定科目は支払手数料が一般的。販促費は分けて持つと判断に使える
- 総額で計上する。入金額だけを売上に立てない
- 海外の媒体の消費税の扱いは必ず税理士に確認する
- 入湯税は預り金。売上ではない
- 数字が合わないときは、基準日・税抜き税込み・割引前後の3点を見る
本記事は一般的な整理です。個別の処理は顧問税理士にご確認ください。