OTAのプラン数は何本が適正か|増やしてはいけない理由

宿の達人 編集部

OTAでの集客を増やしたいとき、多くの宿がまずやることがあります。

プランを増やす。

代行業者からも「プランを増やしましょう」と言われることが多いはずです。
ですが、これは安易にやってはいけません。

実例:プランを12本から20本に増やした結果

ある旅館では、OTA代行業者の勧めでプラン数を12本から20本に増やしました。

増やす前と後で、何がどう動いたかを並べるとこうなります。

項目プラン12本プラン20本
予約数—まったく変わらず
代行業者への手数料—増えた本数の分だけ増加
運用の手間—本数の分だけ増加

売上は変わらず、利益だけが減りました。

しかも、増えたのは費用だけではありません。
プランが増えると、料金の入れ替え・在庫の調整・販売期間の延長も、その本数だけ発生します。
運用の手間が増え、どこかで漏れが出ます。
「気づいたら1本だけ販売期間が切れていた」は、プランが多い宿ほど起きます。

なぜ増やすと売れなくなるのか

理由は明確です。選択肢が多いと、人は決められなくなるからです。

マーケティングでは「選択のパラドックス」と呼ばれる現象です。
選択肢が増えるほど意思決定が難しくなり、行動そのものを起こさなくなります。

ラーメン屋で考えると分かりやすいでしょう。
10種類も並んでいると迷います。迷った挙げ句、
その店をやめて「味噌ラーメン」「豚骨ラーメン」と分かりやすい店に行く。

コロンビア大学の研究では、ジャムの試食販売で24種類並べたときより、
6種類だけ並べたときのほうが、購入率が10倍高かった
という結果が出ています。

これを宿に当てはめると、こうなります。

15種類の似たようなプランがある宿より、
3種類の違いが明確な宿のほうが、予約されやすい。

「どれがいいんだろう」「違いが分からない」と考えているうちに、
お客様は別の宿に行ってしまいます。

では、なぜ多くの宿はプランをたくさん作っているのか

理由はとてもシンプルです。

代行業者にとっては、プランが多いほうが宿からお金を取れるからです。

代行業者の料金体系を思い出してください。
規模によって違いはありますが、多くの代行業者の料金の構成要素に「プラン数」が含まれています。
プランが増えれば増えるほど、代行業者の売上が上がる仕組みです。

OTA側にとっても、掲載されるプランが多いこと自体は不都合になりません。
つまり——あなたの宿の利益がどうなるかとは関係なく、
プランが増えて困る人が、宿の外側にはいません。

この構造があるために、多くの宿でプランが乱立しています。

実際にOTAを利用者として見ていると、正直、見づらくて仕方がありません。
「このプランとこのプラン、何が違うんだろう」と思うことがほとんどです。

では、何で差別化するのか

プランではなく、宿全体のコンセプトです。

あなたの宿ならではの価値、つまり「売り」を明確にすることが重要です。

  • 代々受け継いだ味を守っている、地元の食材中心の会席料理
  • 山あいの高台から望む、雲海と朝日が見える露天風呂

こうした具体的な魅力を前面に出すほうが、プランを8本増やすよりはるかに効きます。

そのうえで、プランは最小限にします。
施設によりますが、基本は「客室ごとに、食事付きかそうでないか」程度で十分です。

何本くらいが目安か

「では何本が正解か」とよく聞かれますが、本数そのものに正解はありません。
基準になるのは、次の掛け算です。

プラン数 = 売る客室タイプの数 × 食事の型(2食付き/朝食のみ/素泊まり)

これに、期間限定のものが数本乗る程度が上限だと考えてください。
この式で出てくる数を大きく超えている場合、
中身が重複しているプランが必ず混ざっています。

判断に迷ったら、自分の宿のページをお客様として開いて、
上から順に読んでみる
のがいちばん早い方法です。
「これとこれ、何が違うんだろう」と自分で思ったら、お客様も同じところで止まっています。

プランの棚卸しの手順

いきなり消すのではなく、まず現状を並べるところから始めます。

ステップ1|全プランを1枚に並べる

OTAごとに、次の列で書き出します。表計算ソフト1枚で足ります。
そのまま使える形にすると、こうなります。

プラン名作成時期対象の客室タイプ直近12ヶ月の件数・売上
( )( )( )( )

これに「他のプランとの違い(1行で書けるか)」の列を1つ足してください。
この最後の1列が、あとの判定の軸になります。

ステップ2|3つのグループに分ける

並べたプランを、次の3グループのどれかに振り分けます。

グループ該当するもの打ち手
売れている予約件数が付いている残す
売れていないが役割がある連泊、直前割、記念日など名前と説明を見直す
売れておらず違いも書けない1行で違いを説明できない削除の候補

「違いが1行で書けない」が最重要の判定基準です。
売っている側が説明できないものを、お客様が選べるはずがありません。

ステップ3|削除する前に、名称と説明文を見直す

売れていない理由が、プランそのものではなく見せ方にあることもあります。

  • プラン名に、他と違う点が入っているか
  • 説明文の1行目で、誰向けかが分かるか
  • 写真が、そのプランの中身になっているか

ここを直しても3ヶ月動かないなら、そのプランは役割を終えています。

ステップ4|季節のプランは、終わったら消す

セール枠や季節限定のプランを、終わった後も残している宿は非常に多いところです。
販売が終わったプランは、管理画面の一覧を長くするだけで、誰の役にも立ちません。
期間が終わったら消すを、月次の作業に入れてください。

増やしてよい場合もあります

原則は絞る、ですが、例外はあります。増やしてよいのは次の3パターンだけです。

増やしてよい場合具体例
客層が明確に分かれている家族連れと、記念日利用の2名
食事の内容が本当に違う部屋食かどうか、献立が別かどうか
特定の期間だけ売る年末年始、連休など

判断の基準は1つです。そのプランは、他のプランでは満たせない需要を取っているか。
「価格だけが違う」「名前だけが違う」なら、増やす理由になりません。

よくある間違い

  • 「とりあえず作っておく」。 使わないプランは、お客様の迷いと自分の作業を増やすだけです
  • 売れていないプランを、値下げして残す。 価格差だけで並ぶプランは、いちばん見分けがつきません
  • OTAごとにプラン構成を変える。 どの媒体で何を売っているか分からなくなり、料金の整合も崩れます
  • 削除の判断を代行業者に任せる。 減らす動機が相手側にありません。判断は宿側で持ってください

まとめ

  • プランを増やしても予約は増えず、手数料と運用の手間だけが増えることがある
  • 選択肢が増えるほど、人は決められなくなる
  • プランが多い構造には、宿の外側の理由がある
  • 差別化するのはプランではなく、宿のコンセプト
  • プランは「客室 × 食事の有無」を基本に、最小限にする
  • 判定基準は「他との違いが1行で書けるか」