OTA比較|宿がどの予約サイトに載せるかを決める5つの軸

宿の達人 編集部

「Booking.comも入れたほうがいいですか」「一休はうちに向いていますか」。
媒体を増やすかどうかのご相談は、いちばん多い質問のひとつです。

ただ、この判断を手数料の率だけで決めると、たいてい外します。
媒体ごとに、連れてくるお客様も、料金の持たせ方も、
運用にかかる手間も違うからです。

この記事は、旅行者向けの「どのサイトが安いか」ではなく、
宿側が「どの媒体に載せるか」を決めるための比較
です。

判断の順番を間違えない

比較の前に、順番を確認しておきます。多くの宿が、次の順で考えてしまいます。

手数料が高い → やめる/手数料が安い → 入れる

これは順番が逆です。正しくはこうです。

  1. その媒体が連れてくるお客様は、他の媒体で取れるか\
  2. 取れないなら、いくらまでなら払う価値があるか\
  3. そのうえで、運用の手間を自館で負担できるか

料率が高い媒体を切れば手数料は減りますが、その媒体が連れてきていた予約も消えます。
国内OTAと客層が重なっている媒体なら他が拾う可能性がありますが、
インバウンド専用の媒体を切れば、その客層は丸ごと消えます。

比較軸1|客層と単価帯

まず、媒体ごとの「連れてくるお客様」の違いです。
優劣ではなく、自館の客室と料金帯に合うかどうかで見てください。

媒体主な客層の傾向どういう宿と相性がよいか
じゃらんnet国内最大級。ファミリー・グループ・ドライブ旅行が厚い客室数があり、幅広い価格帯を持つ宿
楽天トラベル楽天ポイント経済圏の利用者。ポイントを目的に選ぶ層が一定いるポイント施策に乗る余力がある宿
一休.com/Yahoo!トラベル上位価格帯に強い。ラグジュアリー志向高単価の客室や食事を持つ宿
Relux審査制。高単価帯ブランドを作りにいく宿
Booking.comインバウンドの主力。個人手配の外国人旅行者外国人受け入れの体制がある宿
Expedia海外の販売網が広い。欧米圏同上
Trip.com中華圏に強いアジア圏のインバウンドを取りにいく宿
JTB(るるぶトラベル)送客とパッケージ。法人・団体・国内旅行商品との接続団体・パッケージの受け入れがある宿
自社予約サイトリピーター、口コミ・SNS・Googleマップからの流入すべての宿(手数料がかからない唯一の経路)

一休とYahoo!トラベルは同じ仕組みで動いています。
そのため、宿によっては一休.comには出ていないがYahoo!トラベルには出ている、という状態が起こります。
「一休に載っていない」と思っていた宿が、実は掲載されていた——ということは実際にあります。

比較軸2|手数料の考え方(率だけを見ない)

具体の料率は媒体・契約時期・参加プログラムで変わるため、ここでは書きません。
自館の契約書と精算書でご確認ください。そのうえで、比べるときに見る点は4つです。

1. 何に対してかかるか
宿泊料金のみか、食事や税を含むか。ここが違えば、同じ率でも負担額は変わります。

2. 税抜きか税込みか
海外の媒体は税抜きの金額で計上されることが多く、国内の媒体と単純には比べられません。
月次で売上を突き合わせたときに数字が1割ずれるのは、たいていこれが原因です。

3. 支払いの流れ
宿が客から受け取って後で手数料を払うのか、
媒体が先に受け取って手数料を引いて宿に振り込むのか。
後者は入金までの期間が長くなり、資金繰りに影響します。

4. 率の外側にある負担
セール参加時の上乗せ、広告・特集枠の掲載費、ポイント負担分。
これらは「手数料率」の外にあるため、率だけを見ていると実際の負担が見えません。

見るべきなのは率ではなく、その媒体経由の売上に対して、最終的に何%が出ていったかです。
詳しい計算方法は記事A2(主要OTAの手数料一覧)に書いています。

比較軸3|料金の持ち方(ここで運用の手間が決まる)

見落とされやすく、しかしいちばん事故が起きる軸です。

日本の宿の多くは、1人あたりいくらという人数別料金で料金を持っています。
国内OTAはこの形をそのまま受け取れます。

一方、Booking.com・Trip.comなどは「1室いくら」(ルームチャージ型)で考えます。
この2つは自動では変換されません。

実務上、何が起きるか。

  • サイトコントローラーで人数別料金を直しても、ルームチャージ型の媒体には1円も流れません
  • 料金改定のたびに、ルームチャージ型向けの料金を別建てで更新する作業が発生します
  • 更新が漏れると、その媒体だけ古い料金のまま、あるいは販売できない状態で残ります

つまり、Booking.comやTrip.comを入れるという判断は、
「毎回の料金改定の作業が1本増える」という判断とセット
です。
ここを見込まずに入れると、数か月後に「Booking.comだけ値段がおかしい」が起こります。

Airbnbのように、1室1価格+1名増ごとの固定加算という、また別の持ち方をする媒体もあります。
この形では加算額だけが季節変動しないため、
繁忙期に人数の多い予約が入ると、他媒体と金額が合わなくなります。

入れる前に、その媒体が料金をどう持つのかを確認してください。
運用の手間は、ここでほぼ決まります。

比較軸4|販促の強制力(セール・ポイント企画)

媒体ごとに、販促への「乗らされ方」が違います。

  • 参加が任意で、都度判断できる企画
  • 参加しないと露出が明確に落ちる企画
  • 上位掲載や特定プログラムの条件になっている企画

どれも「参加しない」選択はできますが、しないと売れない時期があるという点で、
実質的に費用が固定化されている媒体もあります。

もう一点、販促案内を読むときの注意があります。
案内に「◯月上旬枠」と書かれていても、それは掲載期間であって宿泊の対象期間ではありません。
早期予約系の企画では、宿泊対象が1〜3か月先にずれることがあり、
ここを読み違えると判断が正反対になります。

判定の仕方はシンプルです。

  1. その企画の宿泊対象期間を、案内文ではなく添付の資料で確定させる\
  2. その期間の自館の空室が、そもそも埋まる余地があるかを先に見る\
  3. 費用を「予約額いくらぶんの販促か」に換算する

すでに埋まる日の販促に費用を払っても、増分にはなりません。

もう一つ、販促と並べて見ておきたいのが料金の整合(パリティ)です。
媒体間で価格が揃っているかを厳しく見る媒体があります。
とくに上位価格帯の媒体では、他媒体より高い料金を出していると、
検索順位や特定プログラムでの扱いに影響することがあります。

これは、自社予約サイトを安くしたい宿にとって直接効いてくる論点です。

  • 公式サイトを明確に安くする方針を取るなら、パリティを厳しく見る媒体との相性は慎重に判断する
  • 逆に、料金を全媒体で揃える運用ができるなら、その媒体の自動プログラムに乗る選択肢が出る

どちらが正しいというものではありません。
自館が「公式サイトを最安にする」方針かどうかで、答えが変わります。

比較軸5|運用の手間

媒体を1つ増やすと、増えるのは掲載だけではありません。

  • プランを作る作業が1媒体分増える
  • 販売期間・宿泊可能期間の延長作業が増える(媒体ごとに画面も期限も違います)
  • お知らせ欄・写真・施設情報の更新箇所が増える
  • 予約が入ってからの問い合わせ対応が増える(言語対応が必要な媒体もあります)

なお、すべての媒体で期間延長が必要なわけではありません。
海外OTA連携型や、一部の自社予約サイト系は無期限で運用できるものがあり、
定期的な延長作業が要るのは主に国内の予約サイト系です。
このあたりは媒体ごとの性格を把握しておくと、月次の作業量が読めるようになります。

媒体数×作業項目が、そのまま毎月の固定作業になります。
人手が限られている宿ほど、ここを見込んでから増やすかどうかを決めてください。

「媒体を増やす=売上が増える」ではない

最後に、いちばん伝えたい点です。

媒体を増やすと売上が増えるように見えますが、実際には次の2つが同時に起こります。

1. 同じお客様の取り合いになる
国内OTA同士は客層が大きく重なります。
新しく国内OTAを1つ足しても、もともと別の国内OTAで予約していた人が、
新しいほうで予約するだけ
ということが起こります。
このとき増えたのは売上ではなく、管理する媒体の数だけです。

2. 運用の質が全媒体で下がる
担当が1人のまま媒体だけ増えれば、1媒体あたりに割ける時間は減ります。
プランが古いまま放置される、期間延長が切れる、料金の反映が漏れる。
媒体を増やしたことで、既存媒体の売上が落ちることは実際に起こります。

ですから、増やすかどうかの判断は「客層が重なっていないか」で行ってください。

  • 重なっている媒体を足す → 売上は増えにくく、手間だけ増える
  • 重なっていない客層(インバウンド、高単価帯、団体)を足す → 増分になりうる

そして、増やす前にもう1つ確認することがあります。
いま載せている媒体で、取りこぼしていないかです。
在庫が実室数より少なく出ている日、売止めが解除されないまま残っているプラン、
販売期間が切れたまま気づかれていないプラン。
媒体を増やす前に取り戻せる売上は、思っているより多く残っています。

自社予約という選択肢を、比較表の中に置く

比較表の最後の行に自社予約サイトを入れているのには理由があります。

送客手数料がかからない唯一の経路だからです。
公式サイト、Googleマップ、LINE、電話から入った予約には、送客手数料は発生しません。

OTAをやめる必要はありません。
むしろOTAは、自館を知らないお客様に見つけてもらうための費用として合理的です。
問題は、一度泊まったお客様が次もOTA経由で戻ってくることにあります。

比較の結論としては、こうなります。

  • 新規の入口としてOTAを持つ(客層が重ならない媒体を選んで)
  • リピートの入口として自社予約を育てる(手数料ゼロの経路の比率を上げる)

同じ売上でも、この2つの比率が変わるだけで手元に残る額が変わります。

まとめ

  • 媒体は率で選ばない。「その客層が他で取れるか」から逆算する
  • 手数料は率の外側(セール上乗せ・広告費・ポイント負担・税の扱い)まで含めて見る
  • 人数別料金かルームチャージ型かで、料金改定のたびの作業量が変わる。入れる前に確認する
  • 販促案内の「◯月枠」は掲載期間であって宿泊対象期間ではない。対象期間の空室から判定する
  • 媒体を増やす=売上が増える、ではない。客層が重なる媒体を足しても手間が増えるだけ
  • 増やす前に、いま載せている媒体の取りこぼしを先に潰す
  • 比較表の最後に自社予約を置く。手数料ゼロの経路の比率が、最終的に手元に残る額を決める
  • 各媒体の料率・制度は改定されます。必ず契約書・精算書と公式の最新情報で確認してください