宿の魅力が伝わらない理由|写真と文章で外してはいけない一点

宿の達人 編集部

「昔ほど予約が入らなくなってきた」
「うちの料理はすごく美味しいのに、分かってもらえていない気がする」
「若いお客様も増やしたいけれど、何をアピールしたらいいのか分からない」

こうした声は、料理も接客も良い宿からこそ、よく聞きます。
良いものを持っているのに、伝わっていない。 この記事は、その原因と直し方の話です。

なぜ、以前と同じことをしていると埋もれるのか

理由ははっきりしています。比較検討される施設の数が、桁違いに増えたからです。

いまのお客様は、雑誌ではなくSNSやネット検索で宿を選びます。
一度に目にする宿泊施設の数が多いため、同時に比べられる相手が一気に増えました。

以前は、その季節のエリア雑誌の中で勝てばよかった。
いまは全国のライバルと並べて見られます。 条件がまったく違うのです。

そのなかで、「良いものを持っている」だけでは通用しません。
並んだときに、選ばれる理由が一目で分かるかどうかが勝負になります。

外してはいけない一点は「選ばれる理由を明確にする」

あなたの宿の一番の強みは何でしょうか。

この質問に対して最も多い答えが、「うちは料理もお風呂も接客も最高です」です。
実際にその通りなのだと思います。ですが、お客様からすると、これは選ぶのが難しい。

分かりやすい例で説明します。

お腹をすかせて飲食店の並ぶ通りに行ったとして、

  • 「肉・魚・野菜のすべてが絶品」という看板の店
  • 「A5ランク和牛のすき焼きステーキが絶品」という店

どちらに惹かれるでしょうか。具体的な魅力があるほうが、心に刺さります。

ここが重要なのですが、仮に魚も野菜も美味しかったとしても、
全部をアピールしてしまうと、そもそもメニューを見てもらう段階にすら進めません。

魚と野菜の魅力も伝えたいのなら、まず肉で興味を持ってもらい、
メニュー表を開いてもらうことが先
なのです。

肝心なのは、お客様に選んでもらうためのフックを、1つの軸に決めることです。
全部を捨てるわけではありません。入口を1つにするという話です。

実例|「家族や友人のようなおもてなし」に絞った旅館

ある旅館の事例です。以前は「料理も温泉も接客も最高」と幅広くアピールしていました。

結果はどうだったか。検索ではまったく上位に表示されず、予約のほとんどがOTA経由でした。
広く言っているつもりが、誰にも引っかからない状態になっていたのです。

そこで、打ち出す軸を「家族や友人のようなおもてなし」の一点に変えました。
宿のスタッフとの距離が近いことを、正面から強みとして掲げたのです。

結果

軸を1つに絞ったあと、指標がどう動いたかを並べます。

指標変化
若いお客様3割増加
客室稼働率平日でも70%を維持
売上約1.3倍
20〜30代のカップル・友人グループ予約月平均12組 → 37組
自社サイトからの直接予約15%アップ

さらに、口コミの評価も安定した

この旅館には、もう一段おもしろい変化がありました。

もともと若いスタッフが多く、口コミには
「接客がカジュアルすぎる」「もっと格式の高いサービスを期待していた」
と書かれることが少なくありませんでした。

ところが、そのカジュアルさをむしろ前面に打ち出したことで、
最初からカジュアルさを求めて来てくれるお客様が増えました。

結果、顧客満足度が上がり、口コミ欄の評価も安定するようになったのです。

つまり、本来デメリットと考えられていた「接客のカジュアルさ」を、
「家族や友人のようなおもてなし」という形で強みとして明確に出したこと
が、
そのまま成果につながりました。

低評価の多くは、品質そのものより「期待とのズレ」から生まれます。
軸を明確にするとは、来る前に期待値を揃えることでもあるのです。

「絞ると客が減る」は、逆になりやすい

軸を1つに絞ると聞くと、「それ以外のお客様を捨てることになるのでは」と不安になります。
実際、この不安が理由で決められない宿がほとんどです。

ですが、実例の旅館で起きたのは逆でした。絞ったあとに売上が伸びています。

理由は3つあります。

1. 絞ると、検索で見つかるようになる
「温泉 旅館」で戦うのと、より具体的な言葉で戦うのとでは、競合の数がまったく違います。
全部を言うと、どの言葉でも中途半端になる。
絞ると、少ない言葉でも確実に上位に届くようになります。

2. 絞ると、口コミが安定する
先ほどの通りです。期待が揃った状態で来館されるので、低評価が出にくくなります。
評価が安定すると、また次のお客様が来る。ここが効きます。

3. 絞っても、他の魅力は消えない
軸は入口です。入口で興味を持ってもらえれば、
残りの魅力は館内でもプランの詳細でも伝えられます。

料理の話をやめる必要はまったくありません。最初に言うことを1つにするだけです。

軸を決めたあと、どこを直すか

軸が決まったら、直す場所には順番があります。 上から順に効きます。

効く順に、直す場所と理由を並べます。上から着手してください。

順番直す場所なぜそこか
1プラン名最初に、最も多く目にする文字だから
2OTAの施設紹介文の冒頭2行詳細ページで最初に読まれる場所
3公式サイトのトップの一番上スクロールせずに見える範囲
4Googleマップの説明文検索から直接ここに来る人がいる
5写真の1枚目館内の全景写真のままの宿が多い
6予約後の案内メール来館前に期待値を揃える最後の機会

プラン名に軸の言葉が入っていないなら、他をいくら直しても伝わりません。

この6箇所を同じ言葉で揃えるだけで、伝わり方が変わります。
費用はかかりません。かかるのは、決める時間だけです。

自分の宿の軸を決める手順

1. 口コミを、褒められた点で分類する

自分の思う強みではなく、お客様が実際に書いた言葉から始めます。
じゃらん・楽天トラベル・Googleマップの口コミを直近1年ぶん読み、
褒められている要素を数えてください。一番多く書かれているものが、いまの実力です。

2. 「他と並べたときに違う」ものを選ぶ

温泉・料理・眺望は、ほとんどの宿が言っています。
同じことを言っている限り、比較されるのは価格だけになります。
選ぶべきは、近隣の競合が言っていない要素です。

3. 短所リストを、もう一度見る

古い・小さい・スタッフが若い・部屋数が少ない・食事処が1箇所しかない。
これらは条件を変えれば長所になります。
実例の旅館がやったのは、まさにこれでした。

4. 一文にして、全媒体で同じ言葉を使う

決めた軸は、公式サイトのトップ、OTAの施設紹介文、プラン名、Googleマップの説明文で、
同じ言葉を使ってください。

媒体ごとに言うことが違うと、軸は伝わりません。
言い換えず、繰り返す。 これが最も効きます。

5. 3ヶ月後に、客層の変化を測る

見るのは順位ではなく、予約が入っている層です。
年代・人数構成・予約経路(御施設の実数)を、変更前後で比べてください。

軸の候補になりやすい要素

何を軸にすればいいか分からない、という場合のために、
軸になりやすい要素を挙げておきます。共通しているのは、近隣の宿が言っていないことです。

軸になりやすい6分野を、具体例と効く理由で並べます。

分野具体例効く理由
人スタッフとの距離、女将、料理長の経歴実例の旅館はここでした
建物そのもの築年数、建築様式、創業当時の逸話古さは説明すれば風情になる
1品の料理献立全体でなく特定の一皿名物が1つあれば軸になる
時間帯朝もや、夕日、星空その時間にそこでしか見られない
客層の制限大人だけ、2名限定、ペット可絞ること自体が価値になる
周辺との組み合わせ登山、釣り、酒蔵、スキー宿単体でなく過ごし方で語れる

このうち、すでに口コミで褒められているものがあれば、それが第一候補です。
まだ言われていない要素を軸にする場合は、まず1シーズン試してから判断してください。

よくある間違い

やりがちな5つと、その直し方です。

よくある間違いどうする
強みを3つ並べる並べた時点で軸ではない。1つに絞る
軸を決めたのにプラン名が変わっていないプラン名を最初に直す
料理のこだわりをページの奥に置く軸はトップの一番上に置く
短所を隠す先に言う。隠すと期待とのズレで低評価になる
軸を毎月変える浸透するまで変えない

まとめ

  • 比較される相手が全国に広がったいま、「全部いい」は選ばれない
  • 選ばれる理由を1つに絞り、そこから興味を持ってもらう
  • デメリットだと思っていた要素ほど、軸になりやすい
  • 軸は言い換えず、全媒体で同じ言葉を繰り返す