旅館のデジタル外注費の見直し|追加費用ゼロで空室を減らす
宿の経営で日々悩んでいるのは、結局のところ
「どうすればお客様に喜んでいただいて、継続的にお部屋を埋められるのか」
ということではないでしょうか。
もし、まったく追加のお金を払わずに、つまり実質負担ゼロで、
客室稼働率が安定し、さらにお客様満足度も上がっていったとしたら、夢のような話です。
それを実現するための施策が、ひとつだけあります。
ある旅館では、これを実施してから平日稼働率が20%アップし、リピーターが増え続けています。
施策は「デジタル外注費の見直し」
答えは、デジタル外注費の見直し。つまり外注費の大幅な削減です。
「なぜ外注費を減らすと、お客様満足度が上がるのか」と思われたかもしれません。
経営に携わっている方はよくご存じのとおり、
お客様満足度や集客に本気で力を入れるとなると、大きな資金が必要になります。
- 宣伝費
- 設備の修繕費
- 料理の質の向上
どれもお金がかかります。
デジタル外注費のカットは、家計の見直しとまったく同じ原理です。
固定費を下げると、趣味や投資に回せるお金が増えて生活の質が上がる。それと同じことを宿でやります。
毎月の固定費を大幅にカットし、その余剰資金をお客様満足度と集客に本気で投入する。
これが施策の中身です。
実例|月100万円のデジタル費用を、月25万円に
ある旅館から、最初は
「デジタルにかかる費用が心配だから見てほしい」というご相談をいただきました。
調査してみると、次のような費目に、毎月100万円を支払っていました。
- ホームページ管理
- 予約システム
- SNS運用
- 効果が不明瞭なコンサル費用
そこで、業者の見直しと契約内容の整理を提案しました。
結果、同じサービスの質を保ったまま、月額25万円までコストカットすることに成功しています。
サービスを削ったのではありません。
払わなくてよかったものを、払わなくしただけです。
浮いた75万円を、どこに使ったか
毎月浮いた75万円は、順番を決めて使いました。使った順番と中身は次のとおりです。
| 順番 | 使い道 | ねらい |
|---|---|---|
| 1 | 老朽化していた施設の修繕 | 口コミの不満(大浴場・アメニティ)を消す |
| 2 | 集客につなげる仕組みの改善 | 上がった満足度を予約に接続する |
| 3 | Googleマップ運用とWeb広告 | 露出を増やす |
1. まず、老朽化していた施設の修繕
特に、口コミで叩かれていた大浴場とアメニティの充実に絞って、一気に改善を進めました。
全部を直そうとせず、すでに不満として書かれている場所から手をつけたのがポイントです。
2. 次に、改善した顧客満足度を集客につなげるための仕組みの改善
満足度が上がっても、それが伝わらなければ予約にはなりません。
評価が上がった状態を、集客に接続する側の整備です。
3. さらに、Googleマップの運用とWeb広告を開始
これらを始めて3ヶ月ごろから効果が出始め、平日の客室稼働率が20%アップしました。
もともと不要な経費に使われていたお金が、効果的に使われ出しただけです。
それでも結果としては、実質の手出しゼロで、集客とお客様満足度の向上につながりました。
なぜ宿泊業で、この費用は膨らむのか
宿泊業は、デジタル関連の外注費で足元を見られている典型的な業界です。
理由ははっきりしています。
- 担当者が本業と兼務で、相場を確認する時間がない
- 契約が古い。 数年前の条件のまま、単価も内容も見直されていない
- 成果の定義がない。 「SNS運用」「コンサル」は、何をやると完了なのかが契約書に書かれていないことが多い
- 止めても、すぐには何も壊れない。 だから止める判断が先送りされ続ける
「調べてみたら払いすぎていた」というケースは非常に多く、
デジタル外注費を完全に管理できている旅館は、ほとんど見たことがありません。
続けるか、止めるかの判断基準
棚卸しをすると、必ず「判断がつかない費目」が残ります。
そのときは、次の3つで仕分けると迷いません。3つの問いと、その答えごとの扱いは次のとおりです。
| 問い | 該当する費目の例 | 扱い |
|---|---|---|
| 止めたら、明日困るか | 予約システム、サイトコントローラ、ドメイン、サーバー | 削減でなく単価交渉と契約整理 |
| 成果が数字で説明できるか | 広告、Googleマップの運用 | 説明できるなら増やす候補、出てこなければ報告を要求 |
| 誰がやっても同じ結果になるか | 月1回の料金入力だけの作業など | 内容と金額が見合うか確認 |
1. 止めたら、明日困るか
予約システム、サイトコントローラ、ドメイン、サーバーはここに入ります。
止めると即座に販売が止まるものは、削減対象ではなく単価交渉と契約整理の対象です。
2. 成果が数字で説明できるか
広告やGoogleマップの運用は、問い合わせ件数・予約件数で説明できます。
説明できているなら、削るのではなく増やす候補です。
説明が出てこないなら、まず報告の形式を要求する。それでも出てこなければ、見直します。
3. 誰がやっても同じ結果になるか
月に一度、料金を入れているだけの作業に高額を払っているなら、
内容と金額が見合っているかを確認する価値があります。
金額そのものより、「月に何回、何の作業をして、何を報告しているか」を先に聞きます。
この3つで仕分けると、たいていは
「必要だが高い」「必要だが説明がない」「そもそも要らない」の3つの山に分かれます。
交渉するのは1つ目、報告を求めるのは2つ目、止めるのは3つ目です。
自分の宿で棚卸しする手順
順番はこうです。特別な知識は要りません。各ステップと、そこで何ができていれば次に進めるかを並べます。
| ステップ | やること | 完了の目安 |
|---|---|---|
| 1 | 通帳と請求書から、デジタル関連の支払いを1年分書き出す | 支払い先が漏れなく一覧になっている |
| 2 | 月額に直して、年額を出す | 年額で並んでいる |
| 3 | 1件ずつ「今月これは何をしてくれたか」を書く | 書けない費目が特定できている |
| 4 | 重複を探す | 同じ作業への二重払いがないと言える |
| 5 | 解約でなく契約内容の整理から交渉する | 業務が止まる箇所を外して交渉できている |
| 6 | 浮いた分の使い道を先に決める | 再投資先が決まっている |
対象に入れる費目は、ホームページ、予約システム、サイトコントローラ、OTA運用代行、SNS運用、
広告、ドメイン、サーバー、保守、コンサルです。(御施設の実数を入れてください)
年額にすると判断が変わりますし、「何をしてくれたか」を書けないものが見直しの第一候補になります。
予約システムとサイトコントローラ、HP保守と別のコンサルで、同じ作業に二重で払っているケースも珍しくありません。
いきなり止めると業務が止まる箇所があり、使い道を決めておかないと、ただの一時的な支出減で終わります。
順番を間違えると、効果が出ません
この施策で結果が出た理由は、使い道の順番にあります。
修繕 → 集客の仕組み → 広告。この順です。
先に広告から始めていたら、どうなっていたでしょうか。
大浴場への不満が口コミに残ったまま集客だけを増やすことになり、
来館者が増えるほど低評価も増えていた可能性があります。
満足度の穴をふさいでから集客に回す。逆にしない。
評価が上がる前に露出だけ増やすのは、いちばん高くつく失敗です。
そして修繕の対象も、勘で選んでいません。
すでに口コミに書かれている場所、つまりお客様が不満として言語化してくれた場所から着手しています。
何を直すかで迷ったときは、口コミの本文が優先順位表になります。
よくある間違い
- 安い業者に変えることが目的になる。 目的は同じ質を保ったまま下げることです。
質が落ちれば、満足度の改善という本来の目的と逆行します
- 金額の大きい費目からだけ手をつける。 実際は、成果の定義がない費目のほうが削れます
- 浮いたお金を全体にばらまく。 事例のように、
すでに口コミで指摘されている一点に絞るほうが、評価の変化として現れやすくなります
- 削って終わりにする。 削減は原資づくりであって、
集客と満足度に再投資して初めて稼働率につながります
まとめ
- 空室と満足度を同時に改善する原資は、新しい出費ではなく、いまの固定費の中にある
- 事例では月100万円 → 月25万円。浮いた75万円を、口コミで指摘されていた大浴場とアメニティ、
そして集客の仕組みとGoogleマップ・Web広告に投入した
- 削減はゴールではなく入口。再投資して初めて、稼働率とリピーターに返ってくる