旅館のLINE集客|閑散期の空室を翌日に8割埋めた一斉配信

宿の達人 編集部
  • 閑散期に予約が入らない
  • 週末の予約が埋まっていない
  • 団体客の突然のキャンセルで、空室が大量に出た

こうなると、その月の売上が一気に落ちます。
「何かキャンペーンを打ってでも埋めたい」と思う瞬間があるはずです。

空室率を短期間で改善する方法が、一つあります。LINEの一斉配信です。

なぜLINEなのか

数字で見ると、はっきりしています。同じ「送る」でも、LINEとメールでは届き方がまるで違います。

指標LINEメール
開封率60%以上15%程度
到達率ほぼ100%50%程度
利用者国内9,000万人超(60代も80%以上)—

つまり、見てもらえる確率が桁違いに高いのです。

そしてもう一つ、LINEには速さがあります。
広告やOTAの特集枠は、申し込みから掲載まで日数がかかります。
一方、LINEは今日決めて今日送れる。
「来週の空室をどうにかしたい」という直前の穴埋めに、これほど向いた手段は他にありません。

誰に送るのか|すでに来た人にしか送れない

先に前提を押さえておきます。
LINEの一斉配信は、新規のお客様には届きません。
届くのは、すでに友だち登録してくださっている方、
つまり一度は泊まったことがある人・興味を持って登録した人だけです。

これは弱点のように見えて、実は最大の強みです。

  • 施設をすでに知っているので、説明が要らない
  • 良い体験をした記憶があるので、割引の理由さえあれば動きやすい
  • 広告費がかからないので、値引き分がそのまま原資になる

裏を返せば、登録者がいなければ、この手は使えません。
配信の設計より先に、チェックイン・チェックアウトの動線で登録してもらう仕組みが要ります。

平日を埋める鍵は、ご年配のお客様

平日の稼働を上げたいとき、鍵を握るのはご年配のお客様です。

働いている方や学生は、平日に動きにくい。
一方、引退された方々は、むしろ平日のほうが空いていて過ごしやすいと感じています。

ただし、宿から声をかけないと、旅行のきっかけが生まれにくいのも事実です。

だからこそ、
「今だからこそ、ゆったりお過ごしいただける時期です」と一言お送りするだけで、
「そういえば、そろそろ行こうかな」と動き出す方が出てきます。

「迷惑がられるのでは」という心配について

一斉配信は嫌がられるのではないか、と思われるかもしれません。

LINEの登録時に「お得な情報をお送りしてもよいですか」と確認できます。
問題ないと答えた方だけに送れば、迷惑にはなりません。

むしろ、常連割引や限定特典といった特別感のあるメッセージは喜ばれます。

そもそも、公式アカウントから届く内容が一斉配信であることは、受け取る側も分かっています。
そのうえで登録を続け、ブロックせずにいてくれるということは、
「いつかまた行きたい」と思ってくれている証拠
でもあります。

そして仮に今回来ていただけなくても、宿の名前は必ず目に入ります。
次に宿を選ぶとき、思い出してもらいやすくなる。それだけでも意味があります。

実例:連休明けの空室が、翌日に8割埋まった

小規模な旅館の事例です。
リピーター獲得を目的に、半年ほど前からLINE公式アカウントを運用していて、
登録者は1,000人ほどいました。

大型連休明けの閑散期に、次の配信を行いました。

  • 連休明け限定の特別割引プラン(通常料金より25%オフ)
  • 先着5組限定という希少性を添える

さらに、一歩踏み込んだこと

LINEは、テキストだけでなく動画も送れます。

そこで、女将自身がスマートフォンで撮影した30秒ほどの動画メッセージを添えました。

いつもありがとうございます。女将の〇〇です。

連休明けのゆったりとした時期に、日頃のお疲れを癒しにいらっしゃいませんか。

文字よりも、温かみと雰囲気が伝わります。
突然動画メッセージが届いたら、つい見てしまいますよね。
そして「あのときの女将だ」と思えば、強烈に印象に残ります。

他の宿がどこもやっていないからこそ、圧倒的な差別化になります。

結果

配信の翌日には、その時期の空室が8割まで予約で埋まりました。

ここは前提を補っておきます。
25%オフが適用されたのは、先着5組限定の割引枠だけです。
その枠はすぐに埋まり、残りは配信をきっかけとした通常料金での予約でした。
つまり、割引そのものというより、
「今この時期が空いている」と知らせたことが予約を動かしたことになります。

だから、値引き幅を大きくすることが本質ではありません。
値引きは、あくまで思い出してもらうきっかけです。

お客様からは、

  • 「連休明けの静かな時期を狙っていたので、ちょうど良かった」
  • 「特別価格のご案内をいただけて嬉しかった」
  • 「女将のメッセージが良かった」

という声が届いたそうです。関係を深める効果もありました。

配信文の組み立て方

同じ内容でも、書き方で反応が変わります。次の4つを順番に入れてください。

配信文に入れる4つの要素と、それぞれが外れたときに起きることを並べると次の通りです。

順番書くこと外すと起きること
1誰に向けた案内かを冒頭で絞る全員向けの文章は誰にも読まれない
2空いている理由を正直に書く隠すと「静かに過ごせる」価値が伝わらない
3日付・料金・残数を1行でスクロールされた時点で閉じられる
4予約の入口はリンク1つだけ複数並べるとどれも押されない

1. 誰に向けた案内かを最初に書く

「連休明けの静かな時期にお越しになりたい方へ」のように、
冒頭で対象を絞ると、当てはまる人がきちんと読みます。
全員に向けた文章は、誰にも読まれません。

2. 空いている理由を、正直に書く

「連休明けで空室が出ております」と書いて構いません。
隠すより、「だから静かに過ごせます」と価値に変えたほうが動きます。

3. いつ・いくら・何組かを1行で書く

対象の日付、料金、残数。この3つが1行で分かる状態にします。
スクロールしないと条件が分からない配信は、そこで閉じられます。

4. 予約の入口を1つだけ置く

公式サイトの予約ページ、または電話。リンクは1つです。
複数並べると、どれも押されません。

動画を添えるときのコツ

凝った編集は不要です。むしろスマートフォンで撮った素のほうが効きます。

  • 長さは30秒前後。長いと最後まで見られません
  • 顔が見える人が話す(女将、若旦那、板前)
  • 撮る場所は、その宿らしさが分かる場所(玄関、縁側、厨房)
  • 一発撮りで構いません。言い直しがあっても、そのほうが人柄が伝わります

送りすぎないための設計

LINEの一斉配信でいちばん多い失敗は、送りすぎてブロックされることです。
ブロックされると、その人には二度と届きません。登録者は減る一方の資産です。

守るべき目安は次の3つです。

  • 頻度は月1〜2回まで。毎週の割引案内は確実に嫌われます
  • 割引の案内ばかり送らない。季節の便り、館内の変化、周辺の見どころを混ぜる
  • 同じ人に同じ内容を繰り返さない。「また値引きか」と思われた時点で開かれなくなります

とくに安売りの頻度には注意が必要です。
毎月割引を出すと、お客様は「待てば安くなる」と学習します。
そうなると、通常料金で予約していた方まで割引を待つようになり、単価が下がります。

割引は、埋まらないと分かった日にだけ、限定で出す。 これを崩さないでください。

次の段階:送り分ける

この旅館では現在、登録時に簡単な質問に答えてもらう仕組みを導入し、
地域や年齢によってメッセージを出し分ける準備を進めています。

「女子旅限定プラン」「学生限定プラン」のように、
相手に合わせたメッセージを送れるようにすることが次の課題です。

送り分けができるようになると、配信の頻度を上げてもブロックされにくくなります。
全員に月2回送るより、3つのグループに月1回ずつ送るほうが、総配信数は増えて嫌われないからです。

登録者を増やす場所

配信の効果は、結局のところ登録者数に比例します。
増やす場所は、館内にすでにあります。今日から置ける場所とやることは次の4つです。

場所やること
チェックイン時館内案内のQRコードと一緒に案内する
客室卓上の案内カードにQRコードを載せる
チェックアウト時サンクスカードに載せる
公式サイト予約完了ページとフッターに常設する

このとき、「登録すると何があるか」を必ず一言添えてください。
「お得な情報をお送りします」だけでは弱く、
「空室が出たときに、優先してご案内します」のほうが登録されます。

よくある間違い

やりがちな5つと、それがなぜまずいのかを並べます。

よくある間違いなぜまずいか
登録者が少ないうちに配信の設計から入る先に登録動線を作るほうが早い
毎月割引を配信する「待てば安くなる」と学習され単価が下がる
リンクを複数入れるどれも押されない。1通に1つ
全員に同じ内容を送り続けるブロックは取り返しがつかない
同意を取らずに送る登録時の確認は必ず入れる

まとめ

  • LINEは開封率60%以上、到達率ほぼ100%。メールとは桁が違い、今日決めて今日送れる
  • 届くのはすでに来た人だけ。配信の前に、登録してもらう動線を作る
  • 実例で効いたのは値引きそのものより、「今この時期が空いている」と知らせたこと
  • 女将本人の30秒の動画が、他の宿との決定的な差になる
  • 安売りの頻度は上げすぎない。送り分けが次の一手