旅館の集客を広告費なしで増やす方法|費用をかけない発信

宿の達人 編集部

「どうすれば、継続的にお部屋を埋められるのか」
多くの経営者・女将が最終的に悩んでいるのは、結局ここに行き着きます。

もしそれが、お金をかけずに、しかも半自動でできたらどうでしょうか。

この記事は、毎月100万円以上の広告費をかけていた旅館が、
広告に頼らない集客へ移っていった実例をもとに、その始め方をまとめたものです。

広告は「止めた瞬間に消える」集客です

まず前提を整理します。広告が悪いわけではありません。
ただし広告には、はっきりした性質があります。

  • お金を払っている間だけ露出する
  • 止めた瞬間に、露出も予約もゼロに戻る
  • 積み上がらない

つまり、広告だけで集客を組んでいると、
毎月お金を払い続けないと予約が入らない構造から一生抜けられません。

これに対して、投稿は残ります。
一度作った投稿が、翌月も来年も新しいお客様を連れてくる。
この「積み上がるかどうか」が、広告と発信の決定的な違いです。

実例|毎月100万円以上の広告費をかけていた旅館

ある旅館の事例です。

この旅館は、さらなる成長を目指しているものの、

  • 広告費を抑えたい
  • リピート率を上げたい

というご相談でした。

客室稼働率が悪かったわけではありません。
ですが、雑誌やWeb集客に毎月100万円以上の広告費をかけている状態でした。

そこで私たちは、集客を目的としたSNS運用をご提案しました。

やったこと1|お客様の「体験している様子」を発信する

宿泊されたお客様に許可をいただいたうえで、
館内でお楽しみいただいている様子を発信しました。

実際に体験されている様子を投稿すると、
「この旅館ではこんな体験ができるんだ」という生きた情報が伝わります。

口コミは、ただでさえ破壊力のあるPRです。
それが動画になるのですから、効果は非常に大きい。
施設が自分で「良い宿です」と言うのと、お客様が楽しんでいる姿が映るのとでは、届き方がまるで違います。

やったこと2|「人」の魅力を見せる

それだけではなく、投稿の中身をこの旅館ならではの「人」に寄せていきました。

  • 女将さんが地元の食材を選ぶ様子
  • 館内の隠れた見どころを、女将さんが案内する様子

飲食店のドキュメンタリー番組を見て、
店長の人柄が分かると、つい行きたくなった経験はありませんか。

作り手のことが分かると、人はファンになります。

ただ「いい旅館」は全国にたくさんあります。
そこで選ばれる理由になるのは、
「こんなに情熱的な女将さんに会いたい」「あの料理人さんの料理をまた食べたい」という気持ちです。
これは設備では作れません。

結果

  • リピート客が増え始めた
  • 広告費削減の見通しが立った
  • 週末の予約は1.2倍、平日の客室稼働率も平均10%アップ

そして重要なのは運用の負荷です。
立ち上げこそ大変でしたが、今の投稿頻度は週に1回だけです。

一度作った投稿が、何度も新しいお客様を連れてきてくれている。
これはもう費用ではなく、資産です。

費用をかけない集客が「最強」である3つの理由

この事例から言えることを整理すると、次の3つです。広告と並べると違いがはっきりします。

観点発信(投稿)広告
費用ほぼゼロ。撮影も投稿もスマホで足りる払っている間だけ露出する
持続性過去の投稿が残り翌月も翌年も連れてくる止めた瞬間に露出も予約もゼロ
関係施設のファンが増えていく積み上がらない

広告にはこの3つのどれもありません。ここが本質的な違いです。

何から始めればいいか|最初の1ヶ月の手順

いきなり毎日投稿しようとすると必ず止まります。
最初の1ヶ月は、次の順で組み立ててください。5つのステップと、そこまで進んだと言える状態を並べます。

ステップやること完了の目安
1撮る人を1人決める週1回でも続けられる人が決まっている
2見せるものを3種類に絞る客・人・館内の見どころが決まっている
3撮影と掲載のルールを決めるフロントに1枚の紙で貼ってある
4予約の入口を1タップの位置にプロフィールに公式予約かLINEがある
5「どこから来たか」を毎月見るSNS経由の予約件数を数えている

1. 撮る人を1人決める

「みんなで」は誰の仕事でもなくなります。
続けられる人が続けられる頻度でが原則です。週1回で構いません。

2. 何を見せるかを3種類だけ決める

全部やろうとせず、たとえば次の3つに絞ります。

  • お客様が楽しんでいる様子(必ず本人の許可を得る)
  • 人(女将、板前、スタッフ。仕込み、仕入れ、季節の準備)
  • 館内の見どころ(説明されないと気づかない場所こそ強い)

料理と客室の写真だけになりがちですが、それは他館との差がいちばん出にくい部分です。

3. 撮影と掲載のルールを先に決めておく

お客様を撮る以上、ここは必ず先に固めます。

  • 口頭ではなく、掲載範囲まで確認して許可をいただく(媒体、期間、顔が写るかどうか)
  • お子様や、同行者が写り込む場合の扱い
  • 削除依頼が来たときの窓口と、対応の期限
  • 現場が迷わないよう、フロントに1枚の紙で貼っておく

4. 予約の入口を、投稿から1タップの位置に置く

ここが抜けている宿が非常に多いところです。
プロフィール欄に、公式サイトの予約ページ(またはLINE)への導線を必ず置いてください。
発信で興味を持ってもらっても、入口が見えなければ、結局OTAで探されて手数料が発生します。

5. 「どこから来たか」を毎月見る

投稿数やフォロワー数ではなく、
「SNSを見て」と言って入った予約が月に何件かを数えます。
最初の数ヶ月は小さい数字で構いません。ゼロでなければ、それは積み上がっている証拠です。

費用をかけないための、もう一つの原資

とはいえ、現場が多忙で発信に手が回らない、という事情は十分に理解しています。
専門スタッフを雇う、外注するという選択肢もありますが、それには相応のコストがかかります。

逆に言えば、どこかでコストを削れば、その分を集客に回せます。

そこでまず見ていただきたいのが、デジタル関連の外注費です。
宿泊業は、この分野で足元を見られやすい典型的な業界です。
一切の無駄なくデジタル外注ができている旅館は、正直まだ見たことがありません。

私たちが担当したある旅館では、IT関連費用の見直しで月に50万円の経費削減ができました。
広告費を増やす前に、まず出ていく費用を止める。 これが順番として先です。

広告から発信へ、どう切り替えていくか

いきなり広告をゼロにするのは危険です。
事例の旅館も、まず発信を立ち上げ、リピート客が増え始めてから広告費削減の見通しが立ちました。
順序が逆だと、単に予約が減るだけになります。

現実的な移行は次の順です。

1. 広告を、種類ごとに一覧にする

雑誌、Web広告、OTAの掲載枠・特集枠。
媒体名/月額/掲載期間/その広告から入った予約件数の4項目で並べます。
御施設の数字を、次の表に書き出してみてください。

媒体名月額掲載期間その広告から入った予約件数
( )( )( )( )
( )( )( )( )
( )( )( )( )

ここでほぼ必ず起きるのが、4項目目が埋まらないことです。
「その広告から何件入ったか分からない」広告は、判断のしようがありません。

2. 効果が説明できない広告から、1つだけ止める

全部止めない。1つだけです。
止めた翌月に予約がどう動いたかを見れば、その広告の実力が分かります。
1つずつなら、影響が出ても戻せます。

3. 浮いた分を、発信の体制に回す

撮影担当の時間、簡単な機材、必要なら投稿の外注。
削った費用を、そのまま積み上がる側に移すのが目的です。

4. 直販の入口を強くしておく

発信で興味を持ってもらっても、予約導線がOTAしかなければ手数料は発生し続けます。
公式サイトの予約ページ、LINE、電話。
この3つが投稿から1〜2タップで届く位置にあるかを確認してください。

ここを整えておくかどうかで、同じ予約でも手元に残る額が変わります。

発信が「資産」になるまでの目安

短期の結果で判断すると、ほぼ必ず「効果がない」という結論になります。
考え方として、時期ごとに見る場所を変えてください。

時期この期間にやること見る数字
最初の1〜2ヶ月撮影と投稿を業務に組み込む数字は見なくてよい
3ヶ月目あたり方向を1回だけ調整する反応の良い投稿の種類
半年〜過去の投稿が継続的に見られ始める「見てきました」という声

立ち上げがいちばん大変で、そこを越えると週1回の投稿で回るようになります。
事例の旅館がまさにその状態です。

何を撮るか迷ったときのリスト

ネタ切れが、発信が止まる最大の原因です。
先に10本分を書き出して貼っておくと、かなり延命します。候補を挙げておきます。

  • 仕入れ・市場での買い付け
  • 仕込み、朝の準備、季節の飾りつけ
  • お客様が体験を楽しんでいる様子(必ず許可を得て)
  • 館内の、説明されないと気づかない見どころ
  • スタッフの一日、働く理由
  • 周辺の散歩コース、見頃の花、天候による景色の変化
  • 常連のお客様に人気の過ごし方
  • よくいただく質問への回答

共通しているのは、すでに毎日起きていることだという点です。
新しく作る必要はありません。

よくある間違い

  • 広告を全部止めてから発信を始める。 逆です。発信が回り始めてから、効いていない広告を1つずつ止めます
  • 完璧な写真・動画を目指す。 生活感のある「人」の映像のほうが伝わります
  • 毎日投稿を目標にする。 週1回で十分に積み上がります。止まることのほうが損失です
  • 許可を取らずにお客様を撮る。 一度のトラブルで、施策そのものが止まります

まとめ

  • 広告は止めた瞬間に消える集客。投稿は残り、積み上がる
  • 効くのは料理と客室の写真ではなく、お客様が体験している様子と人の魅力
  • 実例では週1回の投稿で、週末の予約1.2倍・平日稼働率10%アップ、広告費削減の見通しが立った
  • 集客に回す原資は、まずデジタル外注費の見直しから作れる